【映像’17「大阪・新世界物語~この町と生きる人たち~」】
2017.10.29
去年のクリスマスイブ。華やかな気持ちに包まれる年末に大阪・新世界にカメラを持って撮影に出かけた。
いつもと変わらない時が過ぎていた新世界を歩いているとスマートボール屋さんを見つけた。そこで出会った80歳の女性は、亡くなった息子をいまも想い続ける。月命日には、新世界近くの寺で祈る日々だ。「12月24日生まれてすぐ、亡くなった。私の体が当時、弱かったばっかりに…。どれだけ泣いたか。子どもはいまも私を恨んでいると思うから、ここへ来る」。
新世界にあるお好み焼き屋さんの常連の女性は、ある過去を抱えながら生きてきた。だが、フラメンコが縁で、新しいパートナーと出会い、幸せをつかんだ。
日ごろは、ディレクターとカメラマン、カメラ助手の3人で撮影するドキュメンタリー番組だが、今回はディレクターがカメラ手にほぼ一年、大阪・新世界に通い続けた。この間、多くの人たちと出会い声をかけ、それぞれの人生に耳を傾けた。
新世界だから…、自分の居場所があった。そんな声をよく聞いた。そこには、自分の損得やお金の欲はない。ただ、人とつながり生きていきたいという思いが幾重にも積み重なる。 現代社会へのアンチテーゼとして、記録されるべき世界が、そこにはあった。