【映像’18「あるボクサーの死 ~精神医療を問う父の闘い~」】
2018.11.25
ボクシングフライ級世界チャンピオンを目指すひとりのプロボクサーがいました。武藤通隆さん(28)。ボクサーをしながら、高校の数学教師でもあった彼は、プロ3年目の2015年12月、第8戦を戦い、次の試合に向けてトレーニングを始めていました。ところが、通隆さんは、2016年4月、自ら命を断ちました。ついこの前までリングで闘っていた息子は、なぜ死んだのか…。
57歳の父親にとって通隆さんは、離婚後、ひとりで育てた自慢の息子でした。ところが、2016年2月に心理的混乱に陥り、精神科を受診。すると、統合失調症と診断されました。向精神薬を注射され入院。投薬治療が開始されましたが、約2週間後、主治医は症状が安定したと判断し、退院を決めました。けれど、実際は、退院前夜に興奮状態になり、身体拘束され、更に強い向精神薬を注射されるような状況だったのです。主治医からは、「経営上の理由で、退院後3ヶ月間は再入院できない」と言われていました。にもかかわらず、退院後に本人自ら再入院を希望しましたが、許されませんでした。再入院できず、ただ向精神薬を規則正しく飲み続ける息子の顔は、どんどん覇気が無くなっていったと、父親は言います。そして自ら命を断ったのです。
どうして息子は、自殺したのか?疑問がぬぐえない父親は今年4月、真実を知りたいと裁判を起こしました。父親は、息子の退院に際しての医師の言葉が忘れられないと言います。「薬を飲ませてさえいれば、大丈夫…」。番組では、患者の心を診るべき精神科医療はどうあるべきなのか…、を考えます。